Airline Simulator 2 (NOMISSOFT)

エアラインシミュレータ2 エアラインシミュレーター2

RATE: プレイする人を選ぶ古典
プレイ時間: シングルアサインメント数回



いきさつ

これは1990年に発売された SubLOGIC 社の Flight Assignment A.T.P. (Airline Transport Pilot) のアップグレード版である。話は1988年にさかのぼる。SubLOGIC と BAO が制作した(らしい) Flight Simulator 3 はその後、BAO の Microsoft Flight Simulator 4 (1989) と SubLOGIC の A.T.P. (1990) に分化した。'FS4'は、ゲームっ気のない純粋なシミュレーションを広く浅く楽しめることが受け、メジャーになった。これは日本語版(PC-98版)も発売された。一方、A.T.P.は大型旅客機をより詳細にオペレートする方向に掘り下げ、コア層に評価された。日本国内ではマイナーであったが熱烈な支持層があった。

BAO はマイクロソフトに吸収され、FS2004 へと現在も続き、メジャー街道まっしぐらとなった。SubLOGIC はシエラに買収されたが A.T.P. の正当な続編は登場しなかった。(表向きには Pro Pilot が続編ということになっているようだ)

A.T.P. の熱烈な支持層がこれを見放すはずもなく、彼らがアップグレードしたものが Airline Simulator として LAGO から発売された。その後、NOMISSOFT が買い取って改良を加えたものがこの Airline Simulator 2 である。(例によってこのへんは憶測を交えて書いてるので鵜呑みにしないように。)



内容

パッケージを店頭で見かけても、聞いたことのない社名やあやしげなスクリーンショットで、買わずに見送った人は正解かもしれない。基本的にDOSアプリをWindowsのDOS窓で動かすのが仕様となっている。スタートメニューにはいくつかのショートカットが作られるが、どれもDOSのバッチファイルを呼び出すものである。生DOSでも動作するがATCの音声などが利用できなくなる。実際、マイナーメーカーと個人が協力してDOSアプリを一生懸命持ち上げたもので、最近のWindowsアプリしか知らない人が買えば面食らう。しかしこの製品を手にとれば誰でも、エアラインに対する並々ならぬ意気込みを感じ取れるだろう。先にも書いたように、このソフトはエアラインの運行を行うものである。それに必要なものが箱の中にぎっしり詰まっている。リング綴じの分厚いマニュアル、同じ厚さの空港チャート、ヨーロッパ方面のエンルートチャートが3枚(ヨーロッパからアメリカ間のものも含む)、厚紙に印刷されたB747とMD-83/88のチェックリスト。ジョークにしては立派な赤青メガネまでついている(そう、赤青フィルムをつかった立体視機能がついている)。

シミュレーション内容も非常に充実している。チャート類を見ながらルートを作成し、FMSに入力、ATIS、クリアランスからはじまり、プッシュバックされる。タワーからデパーチャー、デパーチャーからセンターにハンドオフする。ATCのキーを見ると、高度の変更リクエストなどもできるようだ。GPWSの音声は実機と同じ、要所でコパイロットの音声が出る。そして極めつけは、オペレーション終了後に、自分がパイロットとしてどれだけエアマンシップにのっとった行動をしたかが評価されるのだ。そして、キャリアアサインメントモードではこれを繰り返し、より理想的なパイロットを目指し経験を積んでいくのである。




苦言も交えて

VGA モードと VESA モードがあり、高解像で表示されるが、見た目はやはり DOS アプリなりである。256色なので当時のものより少しばかりきれいかも、と言った程度。地域によっては独特の質感が X-Plane 3 っぽくきれいに見えるが、あまり期待しないほうがいい。それよりも問題なのはフォトリアリスティック(のつもりで作った)コクピットパネルだ。これが実に醜悪で、汚いコクピット写真をむりやり引き伸ばし、変形させ、どうにかくっつけたような代物なのだ。十分な写真資料がなかったのだと思うが、こんなものを見せられるくらいなら従来どおりのコクピットでよかったのにと思う。Shorts360の機体もはいっているのだが、これのコクピットは貧弱なグラフィックスなのにとてもきれいに見える。

収録期待は多くなく、MD83、MD88、B747-400、B737、B767、A320、Shorts360 で、コクピットパネルは MD-83 と 88 は共通、B767 と A320 が共通となっている。機体固有の操作方法もあるのだが、これは MD83 と B747 しか解説されていない。ボーイングならボーイング系で共通なのかもしれない。ヨーロッパとアメリカのシーナリーがあるが、バッチでデフォルトシーナリーを切り替えており、同時使用はできない。アメリカのチャートは付属していない。

キー操作が異常に多いのだが、これは昔のDOSアプリらしくすべての操作をキーボードに割り当てているのであって、実際はマウスで操作できるところも多い。ただしこのマウス操作にも問題があって、DOS窓ゆえにマウスポインタの動きが荒く、またパネルの表示とクリックの反応が違うバグもある。キー操作とマウスでうまくやる必要がある。キー操作は、シミュレーション操作関係は ALT 同時押し、視界とナビゲーション関係は SHIFT 同時押し、通信関係は CTRL 同時押し、FMS は CTRL と SHIFT 同時押しなどというように整理しようという努力が見られる。ただしマニュアルのキー一覧が今ひとつで、一部のキーは機体別詳細のページを見ないといけなかったりする。キー一覧は別紙にまとめてほしかったところだ。

フライトプランナー機能などという軟弱なものはついていない。紙のチャートは用意してあるので、それを見て自分でやれということだ。またこれがたいへんで、ヨーロッパ方面の土地カンがなければチャートから一つ空港を見つけるにも苦労する。エアポートダイヤグラムなども見慣れておく必要がある。

ATCは機能はあるものの、他機との絡みはないようだ。自分以外のトラフィックはまだ見たことがない。エンジンの操作もある程度必要なようだが、マニュアルを読むのが面倒なこともあってどうすればいいのかわからない。




結び

ほぼ同時期発売のFS4にあるものは軽飛行機以外すべてあると思ってよい。MSFSシリーズが好き勝手なフライトを楽しむのに対し、AS2では「理想的なフライトとは」を提示している。プレイヤーはキャリアアサインメントで、この理想的なフライトに近づいていく。ここがこのソフトの大きな魅力だ。だが、大型機を運行するためには学ぶことが非常に多い。一般的な民間機フライトシミュレータに習熟し、イカロス出版の雑誌についているエンルートチャートや出発到着マップなどに慣れ親しんでいる必要があるだろう。マニュアルにはひととおり説明されているようだが、このソフトでVORとは何か、QNHとは何か、などの基礎から勉強していると気が遠くなる。

エアラインにかける情熱がどんなに熱くとも、このソフトはコンピュータやフライトシミュレータの初心者には絶対に勧められない。楽しめる人はごくわずかだが、我こそはと思う人はぜひ挑戦して欲しい。





TIPS

インストールしたら、まず公式サイトからパッチを落として順番に当てる。
まず2.02パッチ、次にシーナリーパッチ、次に2.11パッチ。

どうもコンベンショナルメモリを馬鹿食いするようで、専用のコンフィグが必要なようだ。スタートメニューに Create AS2 Config というメニューができるので、これを実行するとよい。autoexec.bat と config.sys が書き換えられ、マルチコンフィグレーションになる。これがうざったい人は自分で書き換えてコンベンショナルメモリを確保すること。

HDD にインストールせず CD-ROM から直接実行できる。

ビデオカードにもよると思うが、DOS窓でVGA版を起動させるとフリッカーがひどくて使い物にならなかった。画面のカラーパレットがおかしいと思ったら ALT+2 を押して16色モードを試すと良い。

ジョイスティック有効は ALT J
その後、F6メニューで スロットルとラダーを有効にする

タキシング時のステアリング有効は SHIFT / (マニュアル29ページ)