CRIMSON SKIES (ZIPPER INTERACTIVE / MICROSOFT)

クリムゾンスカイ

RATE: これはいい! 面白い!
プレイ時間: キャンペーン2周クリア





誰もが憧れる架空世界の主人公になれる

このゲームも少し前のものなのだが、当時メディアには高く評価されたにもかかわらず、ユーザー間の情報交換は乏しかったようだ。舞台は1937年のアメリカ、だが現実世界とは少し違った歴史を歩んでいる。巨大な飛行船による航空輸送が発達しており、それを襲う空賊、そして空賊に立ち向かうライバルたち。このロマンと冒険にあふれた世界で、プレイヤーは空賊「フォーチューンハンター」のリーダーとなる。この辺の背景は俺様がいまさら説明するのは野暮というものだ。このゲームの持つアメリカンクラシックなイメージは、クールでモダンな最新兵器を好むプレイヤーには合わないかもしれない。だがそんな文句を言う暇があったらいますぐ公式サイトに行き、自慢の高速回線で宣伝用ムービーを落としてみて欲しい。少しでもわくわくしたなら、空賊の素質ありだ。あとは製品を手に取るだけでとても充実したロマンと冒険の旅に引きずり込んでくれる。




ゲーム内容に密着した優れた演出

このゲームの特徴を一言で表すなら、ノリや演出を重視し、プレイヤーが自然に物語の主人公になれること、と言えるだろう。演出は極めて個人的視点に立っており、ゲームそのものは空中戦アクションゲームなのだが、そこには人が存在し、人と人とのやり取りや物語が存在する。これがゲームの中に非常にうまくちりばめられており、ゲームの盛り上げに成功している。「あの世で悪魔に泣きつきな!」とか「ボスから教わることは多いわ」などキャラクターの声が頻繁に出てくる。

特筆すべきは、これが単なる演出に終わらず、ストーリー(プレイの目的)の誘導に非常に効果的に使われているということだ。仲間からの通信で「ボス、あそこに何か見えますよ」「あれじゃあ撃ってくれって言ってるようなものだわ」「ちょっと! ジャックの言うことが聞こえなかったの? 早く迎えに行かないと・・・」「さっきの弾が燃料タンクに当たった! このままじゃ爆発してしまう、早く助けて!」などなど、次にやることに実に自然に誘導してくれる。時には通信の相手が列車の上に出てきて助けを求めることもある。もちろん、主人公のライバルや、ライバルでもあり協力者でもある美女なども登場し、互いに罵声を浴びせながら物語が進行していく。これにより、ゲームのルールを意識することなく、自分が物語の主人公として振る舞っている気分になれるのだ。

日本語版翻訳と吹き替えのうまさも忘れてはならない。人気の萌え声優は出ていないが、各人がプロの声優としての役割を果たしており、不自然なところはまったくない。これが海外製ゲームであることを忘れさせてくれる。





徹底的なまでの世界観の構築

実写の俳優やCGをうまく組み合わせ、昔の映画のように作られたムービーは物語の盛り上げに効果的に使われているが、これが異様に凝りまくっており、一タイトルのゲームソフトとしては過剰なまでの印象を受ける。説明書はあたかも当時の印刷物のように作られており、昔のパイロットになったつもりで読むことができる。ミッションの説明などは、キャラクターによるセリフの掛け合いで進行し、単に無機質な目的の説明ではなく、プレイヤーが自然と物語に入り込めるようになっている。ミッション終了後には、新聞記事や記念写真、登場人物の手紙などがスクラップブックにべたべたと張り込まれ、それを見ることによって自分の立場を実感することができる。それぞれに全く手抜きがなく、徹底的なまでの世界観の構築によって、否が応でも1937年の架空の世界に引き込まれてしまう。





ゲーム内容自体はごく普通

ゲーム内容は、飛行機だからといってフライトシミュレーションではなく、純粋なアクションゲームとなっている。機首を下げれば速度が増し、スロットルを絞れば速度が落ちる程度でしかない。ラダーである程度旋回することができる。時には失速することもあるが、挙動は実に素直でアクションゲームなりの操作感覚だ。従って、飛行機を操縦するテクニックというのは必要ない。豊富なターゲットロック機能を使って敵を選ぶと、その敵の方向に矢印が出るので、その方向に向かって操縦桿を引けばいい。空中戦でプレイヤーのやることは、いかに効率よくターゲットを選ぶか、いかにうまく見越し射撃をするか、くらいしかない。単純ではあるが、これはアクションゲームとしては順当なものであり、理屈抜きで楽しむにはこの程度が最適ということだろう。ゲーム自体もノリを大切にしており、キャンペーンで同じミッションを何度か失敗すると、ミッションをスキップできるようになっている。攻略や理屈など抜きにして、心底楽しんで欲しいという意図が感じられる。

ゲーム内容のもう一つの特徴として、飛行機のカスタマイズが挙げられる。用意された10種類程度の機体をベースとして、エンジン、武装、装甲などを設定し、持ち金を使ってその飛行機を購入することができる。機体ごとに搭載重量が決まっており、軽量な機体ほど強力な装備は積めず、鈍重な機体ほどさまざまな装備が積めるようになっている。これにより、ゲームバランスを崩すようなものが作られることはない。この飛行機のカスタマイズもゲームの攻略には重要な要素で、自分にぴったりの飛行機を作ると、ゲームの進行がかなり楽になる。早期によい戦闘機を見つけることがゲーム攻略の鍵になるだろう。キャンペーンでは稼いだ賞金で機体を購入するのだが、いったん購入した機体は不要になると売却することができる。売却すると購入金額の全額が戻ってくるので、安心して機体を作りまくって試行錯誤をすることができる。そのように楽しんで欲しいとの制作者側の配慮だと思う。

寄り道的なフィーチャーとして、デンジャーゾーンというのが用意されている。マップにはいくつもの洞窟、橋、建物などがデンジャーゾーンとして用意されており、これらをくぐりぬけると記念写真がスクラップブックに追加される。このデンジャーゾーンを見つけたり、攻略したりする楽しみもある。





極めて完成度の高い良質ゲーム

これだけすばらしいゲームなのだが、もう一息、という部分が少しだけある。一つは、ミッションごとに独自の決まりみたいなものがあり、それがプレイヤーに知らされないこと。例えば、ライバル機に○○をしろと言われることがあるのだが、まじめに従うと極端に難易度が高くなってしまう。しかし実際には従わなくてもプレイの進行には全く問題ない。あらかじめ知っていれば簡単にクリアできるのだが、知らないととんでもなく苦労させられるような部分が何カ所かあった。それから、メニュー画面のボタンの配置が悪く、OK系のボタンとキャンセル系のボタンを押し間違えることがあった。こんなささいなことが気になってしまうくらいの高い完成度と言ってもいいかもしれない。むしろ、この完成度の前には何を言っても糞オタのわがままにしかならないだろう。

先にも書いたように、凝りまくったムービーや演出、すばらしい盛り上がり、わかりやすいゲーム内容、変化のあるステージ構成、適度な難易度、良好な操作性、高い技術力をエンターテインメントに生かしており、どれを取っても近年のPCゲームにはなかなかない良質なゲームだ。コンシューマゲーム的なので、迷わず楽しめ、誰にでも自信を持っておすすめできる。それほど難しくないので、いったんミッションの仕掛けや強い機体を知ってしまうと、飽きやすいかもしれない。だが、飽きるまでの時間が短くとも、非常に充実した、楽しい時間が過ごせるはずだ。

 



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