PETIT COPTER (AQUA SYSTEM)

プチコプター体験版および製品版

RATE:動きだけは楽しめるがその先は・・・?
プレイ時間:製品版全面クリア

 

プチコプター体験版をやってみた。どうせアクアシステムだからまたどうせ腐ったヘリコプターエンジンの使いまわしでどうしようもない製品なのだろうとたかをくくっていたのだが、意外と印象は良かったのだ。まず、ヘリのフライトモデルは非常によく出来ている。ラジコンヘリも実機も操縦したことがないので、その比較はできないが、ジェットコプターとくらべ、大幅に進化している。なんというか、トルクと流され方が不自然ではなくなったのだ。むちゃな機動をしても飛びつづけてしまうX-Planeよりもいいかもしれない。多少乱暴な着陸をしても壊れないのもいい。また、機体とオブジェクトの当たり判定もしっかりしており、当たった位置、方向によってきちんと跳ね返ったりふっとんだりする。メインローターが当たって止まらない限り飛びつづけるので、操縦テクニックによって復帰も可能だ。しかしなんともまあアクアシステムにしてはよくここまで作ったものだ。

ヘリのシミュレーションエンジンができたのだから、あとはフィーチャーしだいだ。ただ部屋の中を飛んで星を集めるだけでは及第点は難しい。シミュレーションを作っている奴らはゲーム性のことをかけらも考えず、とりあえずフライトエンジンさえあればあとはプレイヤーが勝手に楽しみ方を見つけてくれるものだと勘違いしているようだが、きちんとヘリの特性を生かしたフィーチャーを効果的に配置しゲーム性を引き出さねば製品になるとはいえないだろう。

それから気になったのは、音楽とグラフィックのヘボさだ。このへんはエロゲーのほうがずっと進化しているだろう。




追記。

製品版を入手して全面クリアしたので少し追記しようと思う。まず、体験版で得た印象と同様、それなりに納得できるヘリの動きと、それを操って部屋中を回り、微妙なテクニックを試されるのが楽しい。かなり複雑な動きをするが練習すればしっかりコントロールできるようになり、上達するのが実感できるのがよい。家の中に散らばっている「星」を100個集めるという設定なのだが、このヘリを操縦しつつ、どこに隠されているのか探索や試行錯誤をせねばならない。少しでも気を抜くとヘリは暴れだすので、ゲーム中は集中力が要求される。それだけに達成したときの喜びは大きい。ここまでで実売4000円の価値はそれなりにあると思う。が、一般的なゲームをプレイしたことのある者なら、このソフトが制作者に常識がないためにいかに「面白くなる可能性を放棄している」かにすぐ気づくだろう。

このソフトにはゲーム制作者としてあきらかに非常識、練り不足な点がいくつも存在し、制作者どもがクリエイターではなくただのライン工作業者集団であるかがよくわかるようになっている。その点を箇条書きにしてみようと思う。

◎いったん星を100個集めると、はじめからプレイを繰り返すことが出来ない。
このゲームは星を100個集めてしまうと、もうやることがなくなり、もはやアンインストコロールするより他なくなるのだ。集めた星の数をリセットしてはじめから繰り返し遊んでみたいと、普通なら誰でも思うだろう。だがアクアシステムには普通がなかった。星の数をリセットするにはアンインストールしかないのだ。

◎星を100個集めると他の機体が使えるようになるが、前述のように最初からプレイできないので意味がない。
アドベンチャーモードでは使える機体は一機のみである。チャレンジモードでは得点に応じて使える機体が増える。そして、星を100個集めると、これらの増えた機体がアドベンチャーモードで使えるようになる。だが気をつけて欲しい。クリアしても星の数はリセットされないのだ。増えた機体で星を集めるプレイはできず、ただ何もない部屋の中を無目的に飛び回ることしかできない。普通は新しい機体を操縦して星を集めてみたいと思うだろう。プレイヤーの期待をことごとく裏切るアクアシステムのエンターテインメントとはなんなのだろうか。

◎星を100個集めること、隠してある位置に必然性がない。
なぜ星なのか。なぜ100個なのか。なぜラジコンヘリなのか。なぜ集めねばならないのか。なぜ隠すのか。隠してある位置は脈絡もなくヒントもない。すべてに必然性がなく、プレイヤーはこれをゲームから押し付けられた無機質なルールとして受け入れなければならない。このゲーム自体規模の小さいもので、隠してある位置も陰険ではなく100個集めるのも苦ではないので、これらの必然性のなさも許されている。制作者どもは自覚しているだろうか。

◎星を100個集めても自動で終了しない。
画面上の星のカウントが100になったのだが、なぜかエンディングデモに移行してくれない。おかしいと思い、最後は玄関から出るのか、とか、最初の子供部屋に戻るのか、といろいろ試したが、正解は「ESCを押して終了を選ぶ。」だった。(ちなみにエンディングデモはなかった。)

◎玄関から外に出られない。
室内のみのゲームだと思わせるこのゲームにおいて、玄関という象徴的な要素を活用することはとても簡単だ。だが、制作者は何の必然性もない「星を100個」などというフィーチャーを押し付けるくらいなので、前述の項と同様、制作者はただ部屋の中で星を集めさせる以外になにも考えなかったようだ。要素を演出やフィーチャーに効果的に使用するようなことは期待してはいけないのだ。

◎シャワーのアクションボタンの当たり判定が小さすぎる。
メーカーの掲示板を見るとシャワーの星を見逃す人が多いようだが、これはほかのアクションの当たり判定より、シャワーの蛇口だけアクションの当たり判定が小さすぎることが原因だと思われる。

◎追加の機体を入れてもあまり使い道がない。
追加の機体がオンラインでダウンロード可能になっているが、前述の理由によりアドベンチャーモードで使えないのであまり存在意義がない。

◎追加のステージの内容くらいは製品内でやるべき。
馬鹿正直でなんの工夫もない製品版のステージ構成。追加ステージのような工夫も製品版にあるべきだ。

◎視点の弱さ。
狭い空間を飛ぶことが多いこのゲームでは自機と障害物との位置関係を把握することが重要である。だが、プレイ中の視点は、自機の追従視点と、第三者視点の二種類しかない。第三者の視点は自動で位置が決定されるようで、位置関係の把握には役に立たないことが多い。したがって自機の追従視点のみでプレイすることになるのだが、ほかに視点の切り替えが出来ないので、上下、左右、後方が見られないのだ。これは狭い空間を飛ぶときにかなりいらいらする。追加ステージではこの狭い空間でしかも上下に移動させられることが多く、視点切り替え機能の弱さに腹が立つ。

◎わかりにくく煩雑なインターフェース。
ほとんどのメニュー画面では、カーソルキーの上下で項目の選択、左右で項目の内容の選択となっている。だがメニュー画面のレイアウトが悪く、これらが直感的に判断できない。また、カーソルキー以外ではメニューを操作できない。通常であればマウスやジョイスティックもアクティブにするはずだ。

◎ドアの向こうが真っ黒。
ゲームが面白ければ許されることだと思う。が、ドアを見て何の部屋か識別できるようにすればより良くなる。

これらは、ゲーム開発に携わったもののみならず、日常的にゲームをプレイしているものであれば、ゲームの発案段階においてあらかじめ解決されるような簡単な問題であることがわかるであろう。さらに言うと、製品版は体験版の単なる延長であり、製品版ならではのフィーチャーがなかったのが残念だ。体験版は子供部屋がひとつプレイでき、製品版ではすべての部屋を回れるようになる。が、どこもかしこもモデルルームをクソまじめにモデリングしたような何の面白みもないステージで、だれでも思いつくような内容でしかない。この製品の内容すべてが一般人が誰でも想像できるような範疇のものであるのは、つまり開発者のクリエイティビティが客のそれを上回っていないという意味である。あっといわせるような要素で、いい意味で期待を裏切ってほしかったというのは、この会社の製品に期待するべきことではないのだろう。製品全体として、安価な価格設定もあり結果的に及第点としても、それがどういう意味を持つのか理解してほしいと思う。(それができないから変な製品ばかりなのだと思うが。)



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