X-Plane (Laminar Research)

Xプレーン

RATE:これが理解できるかどうかがシミュレーションパイロットの分かれ目となる。







X-Planeヒストリー。

X-Planeとは、流体力学の学者(単に学者としか知らないのがちょっとあれだが)、オースチンメイヤー氏による、流体力学による航空機の挙動の再現を目的としたフライトシミュレータである。その昔、プライベートライセンスの取得に失敗したメイヤー氏はこれを教訓とし、みずからフライトシミュレータの開発に乗り出した。彼の最も得意とする流体力学の知識を生かし、航空機の挙動は極めて詳細なものとなった。大気中での物体の運動をシミュレートしたシミュレーションエンジンは、あらゆる機体のあらゆる状態の飛行を正確に再現した。メイヤー氏は、航空機設計プログラムと、飛行地域作成プログラムを作り、これを添付した。これにより、ユーザーが自由に機体を作成できるようになっただけでなく、架空の機体をも自由に作成し、流体力学に基づいた正確なシミュレーションができるようになった。この点が大きく評価され、航空機設計支援ソフトとして、NASAにも採用された。設計段階の航空機の挙動が、わずか200ドル程度のPCソフトで正確に知ることができるのは、航空機業界にとってもメリットであったに違いない。(このへん、記憶の断片をつぎはぎして書いたので間違ってるところがあるかもしれないがご容赦。)

メイヤー氏は、PC用フライトシミュレータとして楽しめるように、ユーザーコミュニティの協力を得て、多数の実在の航空機、リアルな計器パネル、アニメーションする機体パーツ、全世界のシーナリ、美しい風景など、さまざまな機能や視覚効果を追加していった。これが今日のX-Planeである。







X-Planeの性格。

X-Planeとは、航空機設計ソフト、飛行地域作成ソフト、フライトシミュレーションソフトからなる航空機設計総合パッケージである。設計者は自分の思い描く航空機を設計ソフトで作成し、飛行地域を用意し、さまざまな天候下で試験飛行を行い、未知の航空機の挙動を知る。これが本来のX-Planeの使用方法である。他のフライトシミュレータと大きく異なり、流体力学的に根拠のあるシミュレーションを行うというところに大きな価値がある。ほとんどのエンドユーザーが、他のPCフライトシミュレーションゲームと同等にこのX-Planeを評価し、既製の航空機、既製のシーナリを用い、適当にふらふらと舞い上がったところで、シーナリがダサいだの実機と少し違うだのくだらないことをもっともらしく垂れるクソ人間どもの考え方がいかに間違っているかがこれでよく理解できたことと思う。






X-Planeの中身。

機能面では、最新フライトシミュレータとくらべても何ら遜色ない。特に天候に関する設定項目が豊富なのが目立つ。簡易なATC、フライトプラン機能、リアルウェザー機能、天候レーダー、ネットワークプレイなど。リアルタイムに各種数値データを吐き出す機能や、デフォルトで高級な訓練用コントローラに対応しているところなどはプロフェッショナル用途を意識している。もともとエンターテインメイントソフトでないにもかかわらず、機能面でマイクロソフトフライトシミュレータを上回っていたのは面白い事実だ。

実際の操作感覚はかなり敏感で、挙動は極端である。リアルさを最大にすると、空力の計算結果がより早いサイクルで表現される。ランダムにふらふらするだけのマイクロソフトフライトシミュレータとは雲泥の差である。浮遊感はあるが、挙動が極端すぎ、お世辞にも本物っぽいとは言えない。だがこれは、あくまで航空機設計支援ツールとして考えれば納得がいく。試験飛行での挙動はよりはっきりとわかったほうが嬉しいだろう。同様に、かなり乱暴に着地しても飛行機が壊れることはない。降下率500f/m以上で接地するとガツンという音がして失敗したのがわかるし、わざわざ中断しなくてもシミュレーションが続行できたほうが空力シミュレータとして都合がいいに決まっている。失敗したから最初からやり直してください、というようなゲームソフトではないのだ。

また、ヘリの挙動は特筆ものである。ヘリコプターシミュレーションでこれを超えるものはまだない。回転翼の、複雑で危険な動きをぜひ体験して欲しい。

グラフィックスは非常にセンスのよいレンダリングを見せてくれる。夕刻の赤い空と雲は幻想的ですらある。最新のゲームソフトに比べてもまったく遜色ない。美しいだけでなく、半透明の雲を通して見える滑走路は現実そのものであり、訓練にも有効なのではないか。地形データは、汎用性を重視したせいか、マス目のブロックを埋めるという作成方式なので、海岸線などはリアルさに欠ける。地上建造物もVFRの対象にはならない。風景の綺麗なIFRシミュレータとも考えられる。 ポリゴンオブジェクトと写真テクスチャを貼りまくって強引にそれらしく見せる方法は、広域を扱うフライトシミュレータにおいて明らかに不利である結論が出ている。いくら作りつづけても絶対に満足しない中途半端なシーナリシステムより、汎用テクスチャと汎用オブジェクトでVFRに必要な風景を高い完成度で作成したほうがよほど利口なのだ。







X-Planeのポリシー。

このソフトから受ける印象は、エンターテインメントではなく、あくまでジェネラルアビエーションを体験、学習したいという人向けということである。雰囲気を盛り上げるグラフィック、音楽などは一切ない。メニュー等に装飾は一切ない。計器や風景は標準的パーツを組み合わせたものだし、機体データにはテクスチャすら張っていないものまである。フライトのシミュレーションには、装飾たっぷりのパネルや異常なまでにモデリングにこだわった飛行機の外観、航空写真で覆い尽くしリソースを無駄に消費しまくる風景などは必要ないからだ。ここにはシミュレーションに対する開発側の明確なコンセプトが見てとれる。航空機を操縦するためにはどんな要素が重要かを考え、それを誇張する。優先度の低いものは切り捨てるか、簡略化している。たとえば、航空機の外観のテクスチャはあきらかにフライトシミュレーションに関係がない。ヒマなときに眺めてああ綺麗だなと思うだけだ。風景は、地球規模で再現しようとすると、航空写真を使ったり、主要都市のビルなどをすべて作成するのは不可能であり、無駄な行為である。シミュレーションとは、誇張と省略なのだ。






X-Planeのアップデート。

X-Planeは開発者のメイヤー氏を中心に、メーリングリストのコミュニティから意見を吸い上げ、何人かの協力者とともに開発を続けている。最新版はwww.x-plane.comにて随時公開され、頻繁にアップデートされている。ネットワークで公開されている最新版を利用するには、Laminar ResearchよりキーCDを購入する必要がある。キーCDがなければ5分制限の体験版として機能する。このキーCDは、メジャーアップデートまで有効で、たとえばバージョン5.00用のキーCDは5.99まで有効なので、この間何度でもアップデートの恩恵を受けられる。少し昔までやたら高い製品であったが、最近はゲーム流通で出回っているのでかなり安くなった。輸入PCゲーム屋で購入したら、まずネットで最新版を落とそう。

良いことばかりではない。頻繁にアップデートされるが、たまにデータの仕様が変わって追加データが使用できなくなることがある。このソフトはデータを追加できる仕様となっているが、低品質なデータや開発ポリシーのまちまちなデータを混在させることによって、結果的にシミュレーションの品質を低下させる危険性も孕んでいる。マイクロソフトフライトシミュレータはこの問題によって極めて低品質なシミュレータになってしまうが、幸いにもX-Planeは比較的高品質なデータが多いようである。

最近気になるのが、開発元のアップデートの方向性である。シミュレーション内容の充実よりも、機体パーツのアニメーションなど、どうもマイクロソフトフライトシミュレータと同様、エンターテインメントの方向に走ってしまっているのだ。マイクロソフトフライトシミュレータの轍を踏まないように願いたいものだ。


Laminar Research x-plane.com

 

 

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